芸能人の無断撮影や写真の利用は違法?芸能人に適用されるパブリシティ権とは?わかりやすく解説!

文系

今回は皆さんが一度は疑問に思うであろう芸能人の無断撮影や写真・動画の利用について取り上げていきます。

芸能人の無断撮影や写真の利用には賛否両論で、「芸能人だから、写真や動画を撮られるのは仕方がない。」「写真も勝手に使っていいよね。」と考えている人も多いみたいですね。

今回は法律の観点からはどうなのか見ていきましょう!

考慮すべき権利―著作権・肖像権(プライバシー権・パブリシティ権)

芸能人の無断撮影や写真・動画の利用について考えるうえで知っておくべき権利を紹介します。

著作権とは

著作権に関する公的な活動をしている公益社団法人著作権情報センター(CRIC)はこう説明しています。

「著作物」を創作した者(「著作者」)に与えられる、自分が創作した著作物を無断でコピーされたり、インターネットで利用されない権利です。

ここでキーワードになっている「著作物」とは定義では「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」となっています。

ちょっとこれだけではイメージしにくいですよね。

つまりは、人が創ったもので、その人の個性が少しでも表れていたならそれは著作権ということです。

写真や動画にもそれを撮った人に著作権があることになりますね!

・肖像権とは

実は肖像権は法律上に明確に記載されたものではありません。

肖像権は過去の事件例である判例をもとにできたものです。

一般的には自分の顔や容姿を他人から無断で撮影されたり、利用されたりしない権利として理解されています。

そして肖像権の中にはプライバシー権とパブリシティ権が含まれていると考えられています。

①プライバシー権とは

「無断で私生活上の情報を公開されない権利」として定義づけられています。

これは皆さんよく聞いたことがあるのではないのでしょうか。

これは個人を尊重して安心して生活が送れるようにすべての人に与えられる権利ですね。

つまり勝手に人を撮影することはプライバシー権によって禁止されているんですねー

パブリシティ権とは

パブリシティ権を初めて聞いた方もいると思います。

ある判決の一部分を抜粋すると「肖像等は、商品の販売等を促進する顧客吸引力を有する場合があり、このような顧客吸引力を排他的に利用する権利」がパブリシティ権とされています。

つまり、簡単に言うと他者が無断で自分の顔や容姿を利用することで財産上の不利益を被るのを禁止する権利です。

肖像(自分の顔や容姿)によって財産を得ている人を保護するためのものなので、適用されるのは主に芸能人や著名人です。

一般人には適用されないのです。少し残念です…

以上の三つが芸能人の無断撮影、無断使用の違法性を考えるうえで知っていてほしい権利です。

それでは以上を踏まえて検討していきましょう。

芸能人の無断撮影は違法か?

結論は撮影された内容によるといったところでしょうか。

無断撮影で考えられるのは先ほど述べたプライバシー権です。

このプライバシー権が侵害されていれば違法というわけです。

ですが、プライバシー権の侵害に該当するか否かはそれなりに検討が難しいものでして、ただ写真を撮ったからと言って必ず違法となるわけではありません。

違法かの判別は撮影した内容、場所はもちろん撮影した目的や撮られた人がどういった人であるか、といった様々な事情が考慮されて決められます。

プライバシー権のもとである肖像権は法律の内容として明文化していないので、認定するのにも手間が必要なんですね。

あくまで単純な例ですが、芸能人が番組でロケをしていて、街中を歩いている様子を撮影するだけですと公共性が認められ、プライバシー権を侵害となる可能性は低いでしょう。

ですが、芸能人の方のプライベートの様子を勝手に撮影するのはプライバシー権の侵害になる可能性が高いです。

芸能人は無断で撮影されたとしてプライバシー権の侵害が認められる場合は一般人に比べて可能性は低いです。

顔を出すことが仕事なので、プライバシー権で保護される範囲が狭いわけです。

だからと言ってむやみに撮っていいわけではありません。

撮影したいときは本人に許可を取ったうえで行いましょう。

芸能人の写真を無断で使用するのは違法か?

芸能人の写真をSNSに挙げたり、SNSのアイコンにしたりすることは違法なのか検討しましょう。

結論から言うと、SNSでの利用は違法です。

著作権、プライバシー権、パブリシティ権それぞれからみていきましょう!

まず、著作権の観点からみると著作物である芸能人の写真を用いるのは違法と言えるでしょう。

著作権法の中には個人的に楽しむ範囲は権利の侵害としない条文がありますが、不特定多数の目に入るSNSでの利用では適用されないでしょう。

次はプライバシー権です。

これは写真の内容によると言えるでしょう。

写真の内容が本来は知りえないような芸能人の私生活の一部ですと、プライバシーの侵害ともいえるでしょうし、写真の内容がTV番組内の一部でしたら侵害したとは言いにくいでしょう。

最後にパブリシティ権です。

これはその画像の利用が芸能人の金銭的な利益にどう影響を与えるかが問題になります。

その画像を用いて金銭的な利益を利用者が得ていて、それにより損失をその芸能人に与えるならば権利を侵害したと言えるでしょう。

しかし、個人的な利用にそこまでの影響力を与える場合は少ないので侵害が認められる可能性は低いでしょう。

以上から主に著作権の侵害に該当する疑いがありますね。

芸能人の画像をSNSで利用することは訴えられていないだけで違法行為をしていることになります。

もし使用している方は使用をやめるのが吉ですね!

逆になんで訴えられていないのか?

ここまで読んでくださった方には疑問に思われた方もいると思います。

芸能人の画像を無断で使用している人は多いのに、なぜ誰も訴えられないの?と。

それは訴えるために必要な手間とお金が見返りにあっていないという点が挙げられるでしょう。

訴えて賠償金を得たところでその額は訴えて勝訴するまでの手間に比べたら雀の涙です。

というわけで訴える芸能人がそこまでいらっしゃらないんですね。

しかし違法は違法なので皆さん無断の画像使用はダメですよ!

実際の判例を見ていこう!

実際に芸能人の写真や画像の利用が裁判に発展した例を一緒に見ていきましょう!

おそらくもっとも有名なものはピンクレディー事件でしょう。

簡単にどんな事件か説明すると、誰もが知るあのピンクレディーの写真を被告人が無断で週刊誌に掲載した事例ですね。

この無断利用に対し、損害賠償の請求が行われ、最高裁で争うことになりました。

上告人側(訴えた側)はパブリシティ権の侵害だと主張をしていましたが、結果としてその主張が棄却されてしまいます。

最高裁側の主張は

  • あくまで写真が使用された記事はピンクレディーの曲の振り付けをまねたタレントの思い出紹介の一部であったこと。
  • 用いられた写真が週刊誌全体の極一部であり、また白黒の写真で、大きさも小さなものであったこと。

この二点から被告人側はパブリシティ権の侵害をしていないと認められています。

こういった形でパブリシティ権は様々な状況を考慮されたうえで判断されます。

つまり、一概に権利を侵害しているか否かを判別するのは難しいところがあるのも事実なわけです。

他にも興味深い判例は多く存在します。

これで興味をもった方はぜひいろいろと調べてみてください。

ピンクレディー事件の判決文書に興味がある方は下に添付しておきますので読んでみてください。

081957_hanrei.pdf (courts.go.jp)

まとめ

以上が芸能人の無断撮影と写真の無断利用についてでした!

パブリシティ権や著作権といった様々な権利がかかわってくることが分かりましたね!

もし自分の行動が権利を侵害しているのではと気になった場合はお近くの弁護士の方に相談してみてくださいね。

まとめ

・芸能人の無断撮影、写真の無断利用には著作権、プライバシー権、パブリシティ権について考慮するべき。

・パブリシティ権は自分の肖像でお金を得ている人を保護するための権利。

・無断撮影・無断での写真使用は違法の可能性が高いので気を付ける必要あり。

参考文献

著作権Q&A | 公益社団法人著作権情報センター CRIC

裁判例検索 | 裁判所 – Courts in Japan

著作権法 | e-Gov 法令検索

コメント

タイトルとURLをコピーしました