今回の話題は鳥獣保護法です。
鳥獣保護法とはその名の通りで野生の鳥獣を保護する法律です。
しかし、そんな鳥獣保護法は一部では廃止するべきだとする意見があります。
鳥獣保護法についての理解を深めて、一緒にその意義について考えていきましょう。
鳥獣保護法とは何か
まずは鳥獣保護法を具体的に知るところから始めましょう。
実は鳥獣保護法は平成14年に改正されて鳥獣保護管理法という名前に代わっています。
鳥獣保護法の方が皆さん慣れ親しんでいるので、今もそう呼ばれることが多いのでしょうね。
そしてあくまで私の意見ですが、鳥獣保護法の方が語呂がよさそう。
ということで、ここからの記事は改正前については鳥獣保護法、改正後は鳥獣保護管理法で分けさせてもらいます。
それでは鳥獣保護法についてみていきましょう。
まず環境省は鳥獣保護管理法の目的を以下のように記しています。
鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化を図り、もって生物の多様性の確保、生活環境の保全及び農林水産業の健全な発展に寄与することを通じて、自然環境の恵沢を享受できる国民生活の確保及び地域社会の健全な発展に資すること
要約すると、「鳥獣の保護管理を取り決めることで環境保全や農林水産業の発展を促し、人々の生活を豊かにしましょうよ」ということなんですね。
ではその保護対象となっている鳥獣とはいったい何なのか。
鳥獣保護管理法の条文には鳥獣とは「鳥類又は哺乳類に属する野生動物」と定義されています。
もちろん例外も存在していて「環境衛生の維持に重大な支障を及ぼす鳥獣」または「ほかの法令で適切な保護管理されている鳥獣」としてニホンアシカ・アザラシ5種・ジュゴン以外の海棲哺乳類、いえねずみ類3種については、鳥獣保護管理法の対象外とされてそうです。
それでは鳥獣保護管理法の概要からみていきましょう。
分けると以下の六つの項目に分けられます。
- 鳥獣の捕獲等の規制
- 鳥獣捕獲等事業の認定
- 鳥獣等の飼育・販売等の規制
- 生息環境の保護・整備
- 狩猟の適正化
- 雑則・罰則
ひとつずつ見ていきましょう!
・鳥獣の捕獲等の規定
鳥獣の捕獲等を禁止や制限する内容、捕獲等を行う際の許可についての内容が詳しく書かれています。加えて捕獲をする際のルールも詳しく規定されています。例えば使用禁止の猟具の規定などなど。
・鳥獣捕獲等事業の認定
鳥獣を捕獲する事業を認定することへの具体的な取り決めがされています。認定に必要なことや認定の申請方法などが詳細に書かれています。
・鳥獣等の飼育・販売等の規制
鳥獣を飼育や販売に関することが取り決められています。飼育・販売できる鳥獣や飼育・販売をする際の許可の取り方が詳しく書かれています。
・生息環境の保護
鳥獣保護区に関する内容が書かれています。鳥獣保護区に指定する方法や保護区内での保全事業に関する規定などが取り決められています。
・狩猟の適正化
狩猟の危険を予防するための内容が書かれています。特定の猟具を禁止する区域の制定や危険な狩猟法の禁止と許可についてなどです。
また、狩猟免許に関することもここに書かれています。
・雑則・罰則
その他の規定や決まりを破ったものへの罰則に関する規定がされています。
以上が鳥獣保護管理法の簡単な内容でした。
イメージはわいてきましたか?
迷惑なカラスは駆除できるのか
最近でもカラスを駆除して逮捕されたニュースはたまに見ますよね。
ゴミ捨て場のごみを漁ったり、鳴き声がうるさかったりと何かと害鳥に挙げられがちなカラス。
しかし、いくら迷惑だと言って駆除すると違法になる場合があります。
鳥獣保護管理法では一部の種類のカラスは狩猟鳥獣として狩猟が認められています。
ですが、狩猟鳥獣であっても狩猟免許を保持していなければ狩猟はしてはいけません。
加えて狩猟免許を持っていたとしても法的に認められた狩猟法を用いる必要があったり、また狩猟禁止区域外で狩猟する必要性があったりと規定が多いです。
なので、素人が勝手にカラスに手を出すことは違法になりますので気を付ける必要があるのです。
鳥獣保護管理法はなぜおかしいと言われるのか
批判の声①:鳥と哺乳類だけを保護対象にするのはおかしい!
生物は鳥類と哺乳類だけではありません。
なのになぜ鳥類と哺乳類だけなのかという意見からくるものですね。
それは鳥獣保護管理法の成立した歴史にあります。
鳥獣保護管理法はルーツをたどるともともとは狩猟に関する法律でした。
明治政府になった時に江戸時代よりも狩猟の規則を緩和したところ、誤射による人身事故が多発や、他者の土地への不法侵入が急増しました。
これを受けて「鳥獣猟規則」が作られます。
この時点では鳥獣すべてが狩猟の対象で保護の思想はなかったんですよね。
その後、狩猟規則が加えられ一部の鳥獣が保護対象になることになりました。
ここからが保護の始まりです。
「狩猟法」として制定されるも中には鳥獣を保護する規定も組み込まれていったのです。
そして次第に発想が「狩猟鳥獣以外の鳥獣の狩猟は禁止」という風に転換していき、「狩猟法」は「鳥獣保護法」へとシフトしていきました。
つまり、ここまでの話をまとめると
- もともとは狩猟に関する法律として制定された。
- その後、狩猟対象になる鳥獣に一部保護が入るようになった。
- 改正を繰り返すうちに発想が鳥獣の狩猟に関するものから鳥獣を保護に関するものに代わっていった。
「鳥獣保護法」は狩猟についての法律から始まったことで、狩猟の対象である鳥獣の部分が残り、結果として鳥獣だけを保護する法律となったわけです。
「だからって鳥獣だけを保護する理屈にはならないじゃないか、ほかの生き物も保護しろ」とおそらく批判されるでしょう。
しかし、実際は他の動物も別の法律で保護されています。
例えば、漁業法です。
これは漁に関する法律で漁にルールを設けることで、魚を保護していると言えます。
他にも動物愛護法があるなど様々な法律に分けて生き物は保護されています。
これは生き物ごとに我々の生活への関与の仕方が異なるからでしょう。
その結果、一つの法律群ではまとめることができないということです。
鳥獣保護管理法が鳥獣だけなのはそういった側面もあるからでしょう。
批判②:人に害を与えている鳥獣をなぜ駆除できないのか
皆さん街中で大量の鳥が群れを成して飛んでいるのを見たことがありますか?
あれはムクドリと呼ばれ、有害鳥獣とされています。
街中で鳴き声を上げて騒音を出し、糞を出して街を汚しているので、有害の扱いになっています。
カラスも同様ですね。
生活ごみを漁られて、そのあとの片づけに苦労をした人もいるはずです。
このような有害鳥獣ですが、市役所といった行政機関も鳥獣保護管理法により簡単には駆除できません。
また、たとえ自分の家に鳥獣が巣をつくったとしても許可なしに自分で駆除すると法律違反になるわけです。
このことに憤りを感じている人は少なくないのです。
鳥獣保護管理法は鳥獣の保護と同時に、狩猟による人間への被害をなくすためにもあります。
自身での駆除規制を緩和するにも、他者に被害を出さないことが絶対となっているわけです。
そのための線引きが難しく、現状の法律となっている面があります。
これは鳥獣保護管理法の今後の課題になっているでしょう。
以上二つの批判を取り上げてみました。
些細な批判でも、掘り下げると新たな発見もあって面白いですね。
まとめ
今回は鳥獣保護管理法について取り上げてみました。
少しは鳥獣保護管理法に関心が持てましたか?
少しでも関心を持ち、理解することが今後の課題を発見するうえでも大事だと思います。
より詳細を知りたければ、環境省のホームページなどを参考にしてみてくださいね。
まとめ
・「鳥獣保護法」は現在「鳥獣保護管理法」に名前を変えている。
・「鳥獣保護管理法」は鳥獣を保護することで社会や産業を発展させる目的で制定されている。
・カラスも保護対象で許可なしで無断に駆除すると法律違反になる。
・「鳥獣保護管理法」は課題点もあり、今後どうするかを考える必要がある。
参考文献
日本野鳥の会 : 鳥獣保護管理法 Q&A (wbsj.org)
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